海にほど近い港町にある老夫婦のための住宅である。
この土地には、長年大切に使われ続けていた築100年ほどの建築が建っており、当初は改修することも検討していたが、最終的には建替を決意し、計画がスタートした。
まず、既存の住宅の柱間をトレースするようにグリット状にボリュームを配置した。規則的に配列した柱や筋交といった構造体は、内部で様々な居場所を与え、三日月型の外部空間が、隣接するクリニックとの緩衝帯としての役割を果たす。外壁には、町産の道南杉を用い、内部には既存住宅の構造材であったクリやブナなどを挽き割った材料を再利用した。
既存の建物が持つ長い歴史に思いを馳せ、新たに受け継がれていく建築の在り方を模索した。